地域創生を探究し続ける大学生 しみの本音
佐賀大学1年生 ニックネーム:しみ
佐賀大学1年生 ニックネーム:しみ
Life Story
現在、佐賀大学 地域デザインコースの1年生として絵画や工芸、彫刻など幅広い分野を学び課題に取り組んでいます。
将来は地方の隠れた魅力を発見・発信する仕事をしたいなと思っています。例えばライフスタイルマガジンやフリーペーパー等、媒体は紙なのか、webなのかまだ決めていませんが、その記事を書いたり調査に行ったり編集をしたいと思っています。
interview
中学時代の挫折経験が今の私の原動力に
高校受験、合格圏内だと言われていた志望校に落ちてしまい私立の高校に入学しました。
最初はひどく落ち込みましたが、同様に入学したクラスメイトが、「高校受験は失敗したけん大学は失敗せんようにしよう」と声をかけあい、結果1年の頃から次の受験(大学受験)を見据えた行動に繋がりました。
のちに入学することになる佐賀大の芸術地域デザイン学部について知ったのは高校1年生の頃です。母から勧められ調べてみると、ものづくり(芸術分野)と地域創生という私の中で学びたいと思っていたものが両方ともつまっておりすぐに第一志望となりました。
1年次に参加したオープンキャンパスでAO入試では色々な活動をした人が評価される事を知り、自分の性格にあっていると考え、そこに照準を合わせる事を決めました。高1では写真部を、高2では写真部に追加して画塾、ボランティア、舞台、ワークショップに参加、高3では地域団体を立ち上げ、地域住民やこどもたちと一緒にずっと自分の中にあった問題意識である地域創生について、解決策を考え行動に移してみました。
幼少期からものづくりが好きだった
小学校の頃から絵や作文が得意で賞をもらったり、韓国に劇をしにいったりしたことから、絵やデザイン、舞台など芸術方面に少し自信があり好きでした。中学の頃にモノづくりにはまり、欲しいものを一から作ったり、雑誌・包装紙・厚紙などを捨てずに集め工作に使ったりしました。母が、部屋をのぞくたびに工作をしている私をみて呆れるほどでした。
高校に入学してからも、美大や同じ佐賀大の中でも今とは異なる芸術表現コースと迷っていたほど、ものづくりや表現することが好きでした。
“地域”に問題意識を持っていた
一方で地域というキーワードもずっと頭の中で気になっていて、中学生の初期だったと思うのですがきっかけは両親との何気ない会話からでした。地元が北九州なんですが、近所の店が倒産していく様子をみて「どんどんこの街も廃れていきよるけん、どうにかしてくれ」と両親からふざけて言われ、その時は「そんなんどうにもできんよ。」と答えたのですが、「あー確かに、誰かどうにかせんといかんなぁ」と思い、それからずっともやもやと頭の片隅に残っていました。そこからニュースや学校のディスカッションテーマ等で過疎化や地方の衰退の話題が出る度に、もやもやが大きくなっていきました。
そもそも私にとって地域はとても魅力的なところです。景色は綺麗だし空気もおいしい。自然がたくさんある。自分は都会に興味がないし、どうして都会に人がいくのかわからない。地域をどうにかしたいなぁという想いがずっとありました。
地域×ものづくりという選択
高校2年の時に参加した大月ヒロ子氏の「ものの見方が変わる!クリエイティブリユースから広がる世界」という講演で、廃材を使ったアートを、街の人たちと一緒に作る活動をされている話を聞きました。その時にものづくりはどの年代にとっても楽しいし、それを地域の人と一緒にすることで地域を活性化していこうみたいな雰囲気を感じ、あ、ものづくりってもしかしたら地域創生に繋がるかもと初めて思いました。その後に参加した別のワークショップでは「劇場を拠点に人、もの、街をつなぐ」というもので、そういう話を色々と聞いているうちに、私もものづくり全般が好きだから(絵を描いたり写真を撮ったり劇でもなんでも)、それを全部地域につなげられたら、もともとやりたかったものづくりと問題意識を持っていた地域活性が相乗効果でよくなるのではないかと気付き、芸術表現分野ではなく、地域デザインの方に進路の舵を切りました。
初めての地域創生活動で得たもの
講演やワークショップは受け身だったので、教えてもらった人達のように自分からいろいろやってみないとわからないと思い、高2の1月に“若者が作る創生サークル”という地域団体を立ち上げ自分で地域創生の問題に向かい、解決策を考え実行してみました。
声をかけると年齢も学校も様々な8人が運営メンバーとして集まってくれ、ゼロからみんなで企画をたて実行しました。最初の活動は小学生50人対象のスプラッシュ商店街という企画で、みんなでそうめん流しや、水鉄砲で遊ぶゲームをしてその後、びしょびしょに濡れた商店街の道に洗剤をまいて、みんなでお掃除をしました。商店街を子供達にとって身近なものにしたいとか、商店街ってちょっと怖いって思っているイメージをなくしたいとか、それを見ている商店街の人たちに元気になって欲しいとか、いろんな想いがあって企画実行したのですが、最終的に得られたのが、商店街の会長さんの変化でした。活動当初はマイナスな発言が多かったのですが、活動が終わった後にすごく元気で若々しくなって、自分で新しい活動を始めたりもして、一番、会長さんが変わったように思えました。私は会長さんが変われば、商店街の雰囲気も変わるんじゃないかと思って、とてもやってよかったなと思っています。繋がりも活動も今も残っています。私にとってとても大切な場所になりました。
ある一日のスケジュール
朝ご飯をつくる、洗濯物を干す、掃除など
08:50 一限開始
英語のオンライン授業
10:30 二限開始
アートマネジメントのオンライン授業
※教授が実際におこなったプロジェクトや展覧会の話を交えてくれるのでリアルな話が聞けて面白いです。
12:00 昼食
一人暮らしなので、前日の夕方に作った料理を食べる
13:00 三限開始
工芸の授業
※素材研究「素材と表現:紙」という授業を受けています。これは素材の特性や加工による変化を探り、素材から得た発想を展開した作品を制作するという内容で、一か月間くらい行います。その作品制作をする時間です。
14:40 四限開始
三限に引き続き工芸の授業
16:20 授業終了
洗濯物を⼊れて⾃由に過ごす
スマホ、録画、パソコン
17:30 ⼣食・入浴
料理をする、お風呂に入る
20:00 授業の課題
いろいろな授業で課題やレポート提出があります
24:00 就寝
今はオンライン授業なので、家のこともしつつ授業も受けてとそこまで忙しくはないです。しかし、最近気付いたのが、授業で出る課題やレポートは提出すれば終わりですが芸術の課題はそうではないということです。明確なゴールや答えがないので、何の素材を選んで、何の技法を使い、何を作って、何を表現するのかを一日中考えなければなりません。生活の中にヒントやアイデアがあったりするので、アンテナをいつも張っています。
地方の魅力を発見・発信するメディア作成の仕事は、下記の視点から見ると、どういう仕事だと思いますか?
家族
外に出ると色々としっかりした自分でずっといようとしたり、自分のことを作ったりしてしまうので、外でそういう風に頑張ってやっていけるための休憩場所のような存在。一番心を落ち着けることができる場所です。
ただ私の方向性として、安定よりも仕事の楽しさを優先したいと思っていて、みんなが想像できるような会社につこうという風に思っていないので、お金の面で両親に心配をかけるかもしれないな、と思っています。
学び
地方の魅力を発見するためには、専門的な学問としての学びというよりは、暮らしの中にヒントが隠れていると思います。インタビューをして色々掘り出そうとするのではなくて、人々の生活スタイルや習慣など当たり前・普通と思われているところに魅力を発見するための学びがあるので、簡単とか難しいとか色々あると思うけれど一度どっぷりと生活にとけこんでみたいなと思っています。お金
仕事柄、お金の方はあまり多くない道かもしれないと思っています。そもそも、お金はあまりたくさんはいらないと思っていて、最低限生活ができて、自分の興味あることや好きなことが不自由のないくらいには出来て、子供に迷惑をかけないくらいのものがあればいいなと思っています。
また、社会のためになる仕事ならお金は稼げるのではないかという考え方です。誰のためでもないものはやはりお金を生み出すのは難しいけれど、社会的に意義のある仕事である限り最低限の利益は必ずついてくると考えています。
時間
メリハリが大切。休む時はしっかり休む。やるときは納得できるまでとことんやる。私はこの考えで受験と課外活動を両立させました。色々な活動をしていて勉強は大丈夫なのか、と学校からも家族からも言われていたので、定期考査の時は集中し赤点などは取らず、ある程度やった上で好きにさせてもらっていました。仕事においても同じだと思います。ただ、地域に密着して仕事をしていくなら、生活の中でずっと仕事の内容等を考えてそうな気もします。自分の好きなことなので厭わないですが、友人との時間や、美味しいものを食べる時間等はどんなに忙しくても自分の手で休みを作り出すくらいのつもりでいます。
趣味
記事の内容や切り口、デザインに良い影響を与えてくれるとても大切なものだと思っています。最近は意識的に美術系のテレビ番組を見て、芸術作品や世界のユニークな作品に触れメモを取り作家のアイデアや発想を吸収しています。例えば「美の巨人」や「プロフェッショナル仕事の流儀」「世界は欲しいものにあふれている」などを見ます。あとは、現実逃避もしますよ。アニメ30分×12話を1日で全部見終わったり、長い時は四日間くらいなにもしない日が続いたりします。なかなか現実に戻ってくることが出来ないので、お風呂に入ったり、料理をしたりして、ようやく戻ってきます。
名声
あまり必要がないと考えています。人と接する上で邪魔になったり、壁を作ったり、上から目線になったりしそう。地域の人や顧客の目線に立って、直接関わりながらやるべき仕事であるから尚更、必要がないと感じるのかもしれません。
出会い
空間デザイナーとか写真家の人とか、自分の仕事とコラボレーションできそうな、別の領域の人との出会いを大切にしたいなと考えています。厳密にいうと、私のしたい事って、地域の魅力を見つけることなんです。そこにいる人はこれが普通だと思っているものが実は普通ではなかったり宝だったりするので、一番したいことはみつけること。 伝え方は色々、映像とか見るものだったり読んだりするものだったり、媒体ってたくさんあると思うので、今の内から様々な領域の人と出会って関わっていたら、その後の自分の仕事の幅が広がるかな、と。だから表現する人や作品とたくさん出会いたいと思っています。また、暮らしてきた人が大切にしてきたこと、守ってきたものを考える必要がある為、地域住民との出会いや信頼関係がとても大切だと考えています。
社会貢献
どの企業も使っている人がいる時点でそれは社会貢献なんだと気付いて、昔から両親に社会に貢献する人になれとか、社会のために働いてっていう風に言われていたんですが、せっかく社会のために働くのなら自分の得意なこととか好きなことで貢献するのが一番良いな、と。だから社会のためになること×自分の好きなことが大事みたいな考え方を今はしています。雑誌を通して新しい体験・発見・感動を社会に提案したい。そして一人一人の生活の質が向上するような、心豊かな生き方ができる社会にしていきたいと今は考えています。
これからやりたい事
在学中ある一定の村に入って、その地域の人たちと話したり食べ物を一緒に食べたりして、村の魅力を深掘りしてみたいです。もうそこに住んでいるくらいのレベルで、そこの歴史や地形や特産物とかまで、その町についてぶわーっと長い間かけて調べる事をやってみたいです。
将来的にはまだ具体的には決まっていませんが、読者が自分の好きなところで自由に生活出来るような世の中を作りたいなと思っています。今はどうしても都会になんでもあるからと、都会に集まりがちだけど、そうじゃなくて自分がいいなとか好きだなーって思うもの、場所をたくさん知っていたら生活も充実するし、生きていて楽しいと思える人が増えるんじゃないかな、と。一人一人が心が豊になる生活を見つけられるよう地方の魅力を発見し、発信する仕事をしたいなと今は考えています。
これから進路を決める高校生へのメッセージ
大学受験は一般入試・AO入試・推薦入試など様々です。私はAO入試を利用しました。ぜひ自分の力を十分に引き出せる受験方法を見つけ早めの対策をしてほしいです。また高校3年間は勉強だけでなく沢山の経験を積める大切な時間です。興味のあることがあれば積極的に参加したり取り組んだりして高校生という立場で広い世界に足を踏み入れてみてください。広い世界に出てみると学校生活では経験できない体験が、考え方や価値観に大きな影響を与えてくれます。それは自分の強みや自信につながります。「とりあえずやってみようかな」の第一歩を大切に日々過ごしてみてください。色々な道が見えてくると思います。
皆さんのことを応援しています。私も頑張ります。
*AO入試(エーオーにゅうし、アドミッションズ・オフィス入試)とは、大学の入試方法のひとつ。大学の入学管理局(admissions office)による選考基準に基づいて、学力試験のみで合否を判定するのではなく、高等学校における成績や小論文、面接などで人物を評価し、入学の可否を判断する選抜制度。(出典:Wikipedia)
2021年度から導入の大学入学共通テストの影響でAO入試の内容も変わる可能性があるので、個別に各大学の入試要項をご確認下さい。