〈座談会〉よい高等教育機関とは?高校生にとってよりよい進路選択とは?

1. プロローグ 問題提起と取り組み

問題提起

福岡大学商学部 教授
田村 馨氏

高校の時に、何のために大学に進学するかっていうことを自分なりに考えた学生とそうじゃない学生って、やっぱり大学になってから大きく違ってくるんですよね。

「なんであなた福大の商学部に来たの?」って言った時に「バスで来ました」ってこれジョークで言うんだったらいいんですけどそうじゃない。 大学に進学する目的等を一度も考えたことがないので、私の質問の意図が理解できてない。

九州産業大学商学部 教授
聞間 理氏

何のために大学に来てるのっていうところに関して不明確なのは、私の学部ではほとんどの学生がそういう学生です。 しっかりと深く考えることができていない学生が圧倒的に普通です。

香蘭女子短期大学 教授
中濵 雄一郎氏

入学する前から、食物栄養学科は栄養士、保育学科はや保育士・幼稚園教諭といったように、出口が分かりやすい学科もあれば、私が所属しているライフプランニング総合学科のように、入学してから改めて進路を考えられる学科もあり、後者の場合、モラトリアム的な気分で来る学生も多くいます。

麻生専門学校グループ法人本部 広報部長
久米田 周作氏

専門学校の場合は比較的学びたい分野、目指したい職業が明確になってきてくれる子達が多い状況ではあります。 情報系、医療系、建築系といった風に。

一方で、一般的な大学のように進学をしてから色んなことを決める、悩みながら進路選択できるという意味では、うちもビジネス系の分野等が該当していて、やりたいことが決まっていないけれど、大学ではない、でも就職するには早い、いったん進学をと来る子達もいます。

なるほど、、大学・短大・専門学校、それぞれどんな学生さんがいるのか、校種によった特徴が分かりました。

では、そんな特徴ある学生さん達に対して、それぞれ取り組まれている事、力を入れている事について教えて下さい。

取り組みについて

九州産業大学商学部 教授
聞間 理氏

最近の商学部での取り組みとしては、少し世の中のことを広くみて、その中で本当に大事なことって何なのかを考える時間のようなものを、まずスタートである一年生に向けて増やしました。 今年はコロナっていうのもあったんですが、1年間かけて世界の様子とか新聞等いろんなものを見せたり読ませたりしながら、じゃあどんなビジネスがこれから必要になるか、みたいなことを考えるような仕掛けを作りました。

香蘭女子短期大学 教授
中濵 雄一郎氏

私自身が取り組んできたこととして、「Koran Girls」という組織を作ったことが挙げられます。 これは、自己効力感が低い学生にとって、進路を決めるという何かポジティブに自分を見つめる事に難しさを感じる、という事がわかってきたため、在学中にそこを育むプログラムを実践しています。

本学は女子短大なので、女子が日ごろから小さなグループで行動する特性を取り入れて、例えばインターンシップを一人で参加しようとする学生は少ないのですが、複数人で参加するのであれば参加しやすいといった風に、社会の中の色んな課題についてグループで取り組んで、課題を克服する過程で、自分の役割であったり自己効力感を引き出すプログラムを実施しています。

麻生専門学校グループ法人本部 広報部長
久米田 周作氏

専門学校なので、もちろん実務教育には力を入れているのですが、 GCB教育という、いわゆる志を立てるための教育、そういった人間教育を年間で8コマ、授業としてコマ数に入れています。 ただ資格を取らせるだけであれば正直、社会人スクールであったり、資格学校でいいわけで、専門学校の役割ってやはり職業人として、社会に出てからいかに成長していけるか、周りの方とどうやってうまく調和していくのかという事を意識付ける事も大切な部分かなと、最近すごく感じています。